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「曼荼羅チャート」

2023年11月1日 水曜日

  曼荼羅はもともとサンスクリット語の「マンダラ」の音訳で、マンダラは中心・心髄を意味する「マンダ」と所有を意味する「ラ」の合成語である。つまり「大宇宙の本質的なものを諸仏の配置によって表現し、感覚的・現象的に把握できるようにしたもの」といえる。特に密教においては、経典や注釈書だけでは密教を理解することは難しく、曼荼羅が非常に重要視される。

  マンダラ・チャートとは、曼荼羅模様のようなマス目を作り、そのマス目一つ一つにアイデアを書き込むことで、アイデアの整理や拡大などを図り、思考を深めるものである。   

  現在MLBロサンジェルス・エンエルスで、投手と打者の二刀流で活躍している大谷翔平選手は、花巻東高校時代にマンダラ・チャートを使って今後どうなりたいかといった夢に対する思考を整理し、実行していったそうだ。花巻東高の佐々木洋監督の指導で、高校1年生の時につくったマンダラ・チャートがある。真ん中に「ドラ18球団」と記し、その実現のための8つの要素が「体つくり」・「コントロール」・「キレ」・「スピード160km」・「変化球」・「メンタル」・「人間性」・「運」である。そして、それぞれの要素を細分化して、具体的な行動を8つずつ書いている。計64の目標達成のための行動である。

  高校1年生が、よくここまで思考を深め具体的な行動レベルまで落とせたことに感心する。さらに、フィジカル面、メンタル面と一般に表現するが、彼の場合は「人間性」や「運」ということを明記していることに驚かされる。この精神面の特性が、大谷の大きな成長理由にあがられる。

 この大谷翔平のマンダラ・チャートを見ていると、現在の彼の野球選手としての結果や、彼の振る舞いが、よく理解できる。彼に、心からの敬意を抱かずにはおれない。

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高原 要次

「敬老の日」

2023年10月1日 日曜日

  山間部の我が地域の「敬老会」が、先日催された。対象は80歳以上、住民789名のうちの113名が該当者、14.3%である。因みに、14歳以下(中学生以下)は8.6%。典型的な少子高齢化地域である。
 「敬老の日」、歴史上の由来としては聖徳太子が老人や病人向けの施設「悲田院」を作った日であるとするもの。また、元正天皇が養老の滝に行幸した日、もしくは高齢者に贈り物をした日などとある。
  今日の「敬老会」は、1947年(昭和22年)9月15日に兵庫県多可郡野間谷村が、「老人を大切にし、年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」という趣旨から開催したことが始まりである。9月15日という日取りは農閑期にあたり、気候も良い9月中旬ということで決められた。昭和22年当時は戦後の混乱期で、子供を戦場へ送った親たちも多く、精神的に疲労の極にあった。そうした親らに報いるべく「養老の滝」の伝説にちなみ、9月15日を「としよりの日」とし、55歳以上の人を対象に敬老会を開いたのである。
  翻って今日、人権問題の一つに「高齢者問題」があげられるのは、実に嘆かわしいことである。高齢者の介護・虐待、認知症に対する偏見等、本来敬われるべき高齢者が疎んぜられ、虐待を受けるなど言語道断である。
  儒教の道徳法則に「五倫(ごりん)」というものがある。「父子有親,君臣有義,夫婦有別,長幼有序,朋友有信」である。

父子の親・・・父と子の間は親愛の情で結ばれなくてはならない。
        父親は男子、特に長男に対して厳しく育てようとするし、子は時として反発もする。
        父と子の間には親愛があればいい。しかし、それがなければ、うまくいかない。
君臣の義・・・君主と臣下は互いに慈しみの心で結ばれなくてはならない。
        義とは、他人に対して守るべき正しい道であるが、君主と臣下の関係ではそれを行うにおいて、
        お互いに慈しむ心が必要である。
夫婦の別・・・夫には夫の役割、妻には妻の役割があり、それぞれ異なる。
        夫には父性としての義愛が、妻は母性としての慈愛が必要であり、夫婦の役割は異なるのである。

長幼の序・・・年少者は年長者を敬い、したがわなければならない。
        何しろ、長く生きているということは、そのことだけで尊い。年長者を敬うのは当然である。
朋友の信・・・友はたがいに信頼の情で結ばれなくてはならない。
        「朋」とは学びを同じくするもの。「友」とは志を同じくするもの。そこには、信頼がないと朋友にはなり得ない。

長幼の序、人間関係の基本の一つ。美しくありたいものだ。

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高原 要次

「いまやらねばいつできる (平櫛田中)」

2023年9月1日 金曜日

  30年ほど前、岡山に住む学生時代の友人の案内で井原市の「平櫛田中美術館」を訪ねた。その時、ある言葉が目に入り、その色紙を買って今自室に飾っている。「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる」という額である。平櫛田中は、日本を代表する彫刻家の一人で、107歳まで生きた。
  「人間は思ったら直ちに実行せねばいけない。考えただけではやったことにもならず、消えてしまうものである。『いまやらねば、いつできる』である。そして、『わしがやらねばたれがやる』と自分で覚悟すること。これが人間の努力を確実にするものである。」と田中は語っている。
  松下幸之助がある縁で平櫛田中に会った、その時に「松下さん、六十、七十ははなたれ小僧、男ざかりは百からですよ」と言われたそうだ。松下は語っている。
  『お目にかかったときに、ずいぶん気持ちの若い人だということは感じていたものの、百歳を越えてなお五十年分の木彫用木材を積んで制作意欲を持ち続けておられるということからすると、「男ざかりは百歳から」と言われたのも、口先だけのことではない。やはりほんとうに自分の芸術を完成させるには、あと五十年は木を彫り続けなければならないという執念とも言える強い思いを持っておられるのだ』。自分より二十二歳も年上の平櫛さんが、今なおみずからの仕事に旺盛に取り組む姿勢に感動し、大きな励ましを受けたのです。考えてみれば、百歳を越えてもあれだけお元気で若々しかったのは、常に夢や目標を持ち、それに向かって『今やらねばいつできる。おれがやらねばだれがやる』と、今という一瞬を精いっぱい生きておられたからだという気がする」と。

人間いたずらに多事、人生いたずらに年をとる、いまやらねばいつできる、わしがやらねばたれがやる・・・。

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高原 要次

「木村摂津守喜毅」

2023年8月1日 火曜日

  木村摂津守喜毅(よしたけ)は、幕末期の幕臣。目付、軍艦奉行等幕府の要職を歴任し、とくに幕府海軍の建設に尽力し、軍艦奉行となった人物である。
幕府は、元延元年(1860年)日米修好通商条約批准のため米国に使節を派遣するのだが、この時正使を乗せたポーハタン号とは別に、護衛する役目と乗組員の航海練習を目的として「咸臨丸」が派遣される。遣米使節副使として木村喜毅が咸臨丸の司令官となり、その下に艦長として勝海舟がおり、従者として福沢諭吉、通訳として中浜万次郎が乗船している。
  木村喜毅は、この「咸臨丸」の航海に際して、航海の道案内と米国側との連絡のため、海軍大尉ジョン・ブルックを始めとする米国の軍人の乗艦を幕府に要請し、反対する日本人乗組員を説得して認めさせた。また、乗組員たちの手当てを幕府に要求したが容れられず、自分の書画骨董を処分して3千両(約2億円)もの大金を咸臨丸に積み込み、全員に報奨金や服装・土産代に分配して残らず使い切った。
  サンフランシスコに到着した木村善毅ら一行は市民の大歓迎を受けた。市長主催の歓迎会に出席した木村は、席上での乾杯の際に“今、日本の皇帝のために乾杯していただいたが、その名前がアメリカ大統領の前にあった。こんどは大統領の名前を先に、アメリカ大統領と日本の皇帝のために乾杯していただきたい“と言って、米国人を感嘆させた。サンフランシスコの市民は、木村喜毅とその一行の姿と所作に美しさと尊敬の念を抱いた。 
  地元紙は木村について以下のように評した。「彼は一見しただけで温厚仁慈の風采を備えた人物で、四十前後と見受けられた。やがて彼は紳士的な服装で謙恭な態度で現れた」 (デイリー・アルタ・カリフォルニア紙)、 「頭上より足の指先に至るまで、貴人の相貌あり」 (ブレッディン紙)
 「咸臨丸」から、163年が経った。世界の中で、「日本」が「日本人」が問われている。世界から尊敬される日本国でありたい、そして尊厳ある日本人でありたい。究極的には、その人の「立ち居振る舞い」であり、それはその人の精神性ではなかろうか・・・。 

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「ご機嫌なチャレンジャーになれ!(ポジティブ心理学)」

2023年7月1日 土曜日

  2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士の「年収と幸福」に関する研究調査(アメリカ人45万人の調査)によれば、年収が多ければ多いほど「生活評価」は高まるものの、「幸福度」は年収7万5千ドルで頭打ちになるとのこと。
  また、「幸せと感じられる時間」や「不機嫌な時間」が日常生活の中でどれくらいあったかを調査する数々の研究では、幸せともっとも大きな相関関係があったのは、「睡眠」と「上司」であることがわかった。
  幸福にも「人生そのものに対する総体的な評価」、「日常生活における評価」の二種類があると言われるが、日常生活においては、十分な睡眠と毎日顔を合わせる上司の影響力が甚大だった。しかも、カーネマン博士によれば「結婚」が幸せに与える影響すら、「上司」の比ではないのだそうだ。
  自分だけの価値観をしっかりと持って、日常生活を大切にして生きて行かなければ、いくら出世しても、収入があっても、幸せを実感して生きることは難しいと言う訳である。
  生きていくために必要な身体の働きのほとんどは、交感神経と副交感神経によってコントロールされている。交感神経が「緊張と闘争のシステム」であり、副交感神経は「リラックスと休息のシステム」である。身体にとってはどちらも必要なシステムだが、ストレスが過剰で交感神経が優位になりすぎると健康を維持するのが難しくなってくる。健康で長生きするためには、副交感神経が優位な方が有利である。いわゆる“ごきげん”な人は、「脳がリラックスしていて、自由な発想ができる状態」であり、副交感神経が優位な状態である。“ごきげん”だからこそ、よいアイデア、新しいアイデア、奇抜なアイデアが浮かびやすし、リスクを恐れず困難なこと、新しいことにもチャレンジできる。
  しかし、いろいろなことにチャレンジすると失敗することも多くなる。しかし、それらのちょっとしたトライや失敗で命を落とすことはないであろう。幸せで健康であれば、また何度でもチャレンジしてやり直すことができる。要は、そんなふうにポジティブに考えられるかどうかである。

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「グローバルサウス」

2023年6月1日 木曜日

 「グローバルサウス」とは、アジア、アフリカ、中南米などの新興国や発展途上国の総称で、主に北半球の先進国に対し、南半球の国が多いことからこう呼ばれる。かつては「南北問題」と言われていたが、東西冷戦後の1990年代から、人・モノ・カネ・情報などが国境を越えて活発に動くグローバル化が進んだ。その恩恵を受けられずに取り残された国や地域などが「グローバルサウス」と呼ばれる。これらの国々は、グローバル化に伴い、貧困、環境、人権などの問題が浮き彫りとなっている。一方、多大な恩恵を受け経済的な発展を遂げている先進国を「グローバルノース」と呼び、アメリカやヨーロッパ、日本が含まれる。
  グローバルノースの人々が普段使っているモノには、グローバルサウスの国で作られたものが多数ある。特に価格の安い雑貨や洋服などは、安い労働力で作られている可能性がある。また、グローバルノースの人々の生活は、グローバルサウスに住む人たちが掘り出した資源や、栽培した農作物を輸入することで成り立っている側面があり、過剰な採掘や農作物の栽培は、原産国の資源が枯渇するという問題へと発展する。食料・燃料価格の高騰や地球温暖化など、問題の多くは先進国に責任があるのに、被る影響は自分たちの方が大きい、とグローバルサウスの人たちは思っている。
  しかし近年、経済的にも政治的にも急速に力をつけてきた中国、相対的に低下してきたアメリカやヨーロッパ諸国、ロシアのウクライナ侵攻等でグローバルサウスの状況がかなり変わってきている。グローバルサウスの多くの国々は、それぞれの国益最大化のために欧米・中露のいずれとも「うまく付き合っていきたい」と考えており、「中立」の立場を表明する国が現れてきている。それは、とりもなおさず「経済的実利」なのである。
  東西冷戦後の30年間で、新興国や発展途上国は世界の国内総生産(GDP)の2割から4割に高まり、逆にG7(先進7か国)は7割から4割に下がった。経済的にもグローバルサウスの位置づけが高まっている。特に、インド・ブラジルは、政治的にも経済的にも発言力を増し、次の時代をリードする国になるであろう、と思われる。
  先進国と後進国、資本主義国と社会主義国、東洋と西洋・・・、二極では語れない“新しい今”が来ている。

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「レンゲ米・・・」

2023年5月1日 月曜日

  田植えを1か月後に控え、トラクターで満開のレンゲ草を鋤き込んでいる最中である。化学肥料は使わず、有機肥料とレンゲ草を使って作る我が家の米は、美味しいと評判である。
植物の肥料の要素は、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)。レンゲ草は窒素肥料になる。レンゲ草はマメ科の植物で、土壌中の根粒菌という微生物と共生している。その菌がレンゲ草の根っこに根粒と呼ばれるコブを作り、空気中の窒素を蓄えてくれる。レンゲ草を根ごと田んぼに鋤き込むことで、植物の成長に欠かせない栄養素である窒素を行き渡らせ、土壌を肥やすことができるのである。他の有機肥料も併せて使用するが、窒素肥料を過剰に与えると逆効果で軟弱な育ちになり病害虫に負けやすくなる。レンゲ草の田圃の肥料はその塩梅が難しい。
  一般的においしい米とされるのは、炊きあがりが美しく、ほんのりとした甘味と香りがあり、ふっくらと柔らかく、粘りと適度な硬さがあることと言われている。なかでも、米の粘りと硬さのバランスを左右するのがアミロースとアミロペクチン。粘りと硬さは、この2種類のでんぷんの比率で決まる。アミロペクチンの多いお米は粘りがあって、ほどよい歯ごたえがあり、アミロースの多いお米は、硬く、パサパサしている。アミロースの含有量が少ないほどおいしいというわけではないが、良食味の要素の一つである。稲の育つときの気温が高温で日射量が多いときはアミロースの含有量が低くなり、粘りのある米が出来る。人気の高いコシヒカリのアミロースの含有量は19%程度である。アミロースが多いお米は硬く、パサパサとした食感で、インディカ米に代表される。アミロペクチンが多い米は粘りがあり、歯ごたえが感じられ、もち米に代表される。
  レンゲ草を鋤き込むことと、アミロース、アミロペプチンとの関係は定かではないが、「レンゲ米」は旨いような気がする・・・。
  ところで、我が家の「レンゲ米」を“私が作っている”、と言うのはおこがましい。それを作っているのは「水」と「大地」と「太陽」である。私はただ、土を耕したり、水を調整したり、田の草とりをしているだけである。そして、そこにレンゲ草の力を借りている。

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「どうする日本!」

2023年4月1日 土曜日

 過去30年と今後40年の日米中のGDPの推移をみると愕然とする。“どうする日本!”  1990年頃、アメリカは日本の2倍、中国は日本の半分であった。2000年頃に、中国は日本とほぼ同じになり、それから20年経ったいま、中国のGDPは日本の数倍になった。40年後の2060年をみてみよう。アメリカはいまの2倍ほどの規模になっているだろうが、中国は驚異的な発展をとげ、想像を絶する世界が出現していると思われる。しかし日本は、この40年間でわずか7.2%しか成長しない。つまり日本は、過去30年間GDPは約5,000億ドルで殆ど増えておらず、さらにこれからの40年も、さしたる増加は見込めない。
 2022年に公表されたIMFの世界経済見通しによると、一人当たりGDPは台湾が3万5513ドルとなり、日本の3万4347ドルを越えた。韓国は、すでに日本を抜いており、円安の影響もあるが日本は韓国・台湾より低位にある。因みにアメリカは7万5179ドルである。2012年には、日本の一人当たりGDPはアメリカと同程度であり、韓国の約2倍だった。この10年間できわめて大きな変化が起きた言える。
 その国の「国力」を決めるのは、①武力(戦力) ②経済力 ③戦略 である。そしてそれを支えるのが「人材」である。イギルスの高等教育評価機関Quacquarelli Symondsが世界大学ランキングを発表した。総合順位でみると、世界のトップ100位以内に入った日本の大学は5校(23位東京大学、36位京都大学、55位東京工業大学、68位大阪大学、79位東北大学)。アメリカは27校、韓国が6校、中国は12校である。「コンピュータサイエンスおよび情報システム」でみると、日本の大学は100位以内に2校(45位東京大学、100位東京工業大学)しか入っていない。アメリカは30校、韓国は5校、中国は6校である。これからの産業を推進していく上で前提となる科学技術や情報技術、それを行う大学教育において日本はかなり立ち遅れている。
 我が国を取り巻く、安全保障環境は極めて厳しい。その中で、「武力(戦力)」をいかに整えるかは急務であり、その前に防衛に対する基本的な考え方と長期的な戦略が必要である。日本がこれまで「経済大国」と言われてきたのは経済規模が大きかったかれである。しかし、今後40年を考えると中国やアメリカに規模では遠く及ばない。日本は規模ではない、別の何かを見出さない限り、世界の中で生き延びられない・・・。
 「武力」、「経済力」、「戦略」・・・。さあ、“どうする日本!”

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「WGIP(War Guilt Information Program)ウォ―・ギルト・インフォメーション・プログラム」

2023年3月1日 水曜日

  ウォ―・ギルト・インフォメーション・プログラムとは、大東亜戦争終結後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本占領政策の一環として行った日本国民に対する再教育プログラムである。
  米軍占領下の検閲事情やGHQの資料を研究分析した文藝評論家の江藤淳は、これは「戦争についての罪悪感を日本人に植えつけるための宣伝計画」というものであった、と述べている。
 殆どの日本人は、敗戦は米軍の殺戮と破壊の結果であり、それは産業と科学の劣勢故であると考えていた。また、大都市の無差別爆撃や広島・長崎への原爆投下は人間として許しがたい行為であると思っていた。                                 
 怨嗟の矛先が米国に向かず、日本人自身にウォ―・ギルト(戦争犯罪)があるように思わせるために、GHQは新聞社に対し用紙を特配し、日本軍の残虐行為を強調した「太平洋戦争戦争史」を掲載させた。平行してNHKで、連合国に都合の良い解釈の「真相はかうだ」というラジオを3年ほど放送し、日本と米国との間の戦争を、現実にはなかった「軍国主義」と「国民」との間の戦争にすり替えたのである。
 大東亜戦争で日本は負け、連合国(実態は米国)により7年間占領された。連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、1.婦人解放 2.労働組合の助長 3.教育の自由化・民主化 4.秘密的弾圧機構の廃止 5.経済機構の民主化 のいわゆる「5大改革指令」を出した。占領政策の基本方針は、軍国主義の廃止と民主化となっており、その後の日本にとって大いに有効な改革もあったが、真の目的は“日本が二度と米国に歯向かわないようにする”ことであり“日本の弱体化”であった。

 敗戦後80年が経つ。米国占領の7年間が、このウォ―・ギルト・インフォメーション・プログラムが、これほどに日本を弱体化させ、日本人を自国に誇りを待たない民族にした、ことに驚愕する。そして、日本が自立した誇りある国に再生する道を歩くことを強く望む。

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「アンラーニング」

2023年2月1日 水曜日

 「VUCA(Volatility:変動性・Uncertainty:不確実性・Complexity:複雑性・Ambiguity:曖昧性)」と言われる変化の激しい時代においては、既存の価値観やこれまでの成功パターン、今持っている知識、に頼っていては事態の大きな変化に対応できない。常に危機意識を持って時代の潮流・動向を見据え、必要とされる知見をいち早く習得していくことが重要である。  
 「アンラーニング(Unlearning:学習棄却)」とは、これまでの価値観や知識を見直しながら取捨選択し、これからの成長のために捨てるべきものは捨て、取り込むべきものを取り入れることである。「アンラーニング」を言葉や知識として理解することは比較的簡単であるが、従来の常識や固定概念を見直し、個人の行動や組織の変革を「体現」することは、容易ではない。
 「アンラーニング」は「ラーニング(Learning:学習)」を否定するものではない。むしろラーニングを前提として、アンラーニングがあり、特に「経験学習モデル」を理解しておくことは重要である。経験学習モデルは、デービッド・コルブにより提案された。「具体的経験」、「内省的反省」、「概念化・抽象化」、「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返すことで、経験学習が行われる。その要素は、「ストレッチ(挑戦)」、「リフレクション(振り返り)」、「エンジョインメント(楽しみ)」である。
 アンラーニングは、単にこれまで学習したものを「忘れ去る」ことではなく、これまでの経験学習から作られた既存の価値観を「認識」し、個人や組織をより進化させるために修正することである。
 人や組織の成長には、法則化されたモデルがあり、成長の段階として、「局面Ⅰ:形成期」・「局面Ⅱ:定常期」・「局面Ⅲ:統合期」の三段階がある。これを「成長曲線」という。局面Ⅰから局面Ⅱへは連続(延長戦上)しているが、局面Ⅱから局面Ⅲへは不連続(延長戦上にはない)である。この局面Ⅱから局面Ⅲへ移行する時に重要なことがアンラーニングであり、パラダイムシフトである。
 未来学者のアルビン・トフラーが言っている。“21世紀におい、「無教養な人」というのは、読み書きができない人のことではなく、「学ぶこと(Learning)」・「学習棄却(Unlearning)・「学び直し(Relearning)」ができない人である”と。

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