「グローバルサウス」

 「グローバルサウス」とは、アジア、アフリカ、中南米などの新興国や発展途上国の総称で、主に北半球の先進国に対し、南半球の国が多いことからこう呼ばれる。かつては「南北問題」と言われていたが、東西冷戦後の1990年代から、人・モノ・カネ・情報などが国境を越えて活発に動くグローバル化が進んだ。その恩恵を受けられずに取り残された国や地域などが「グローバルサウス」と呼ばれる。これらの国々は、グローバル化に伴い、貧困、環境、人権などの問題が浮き彫りとなっている。一方、多大な恩恵を受け経済的な発展を遂げている先進国を「グローバルノース」と呼び、アメリカやヨーロッパ、日本が含まれる。
  グローバルノースの人々が普段使っているモノには、グローバルサウスの国で作られたものが多数ある。特に価格の安い雑貨や洋服などは、安い労働力で作られている可能性がある。また、グローバルノースの人々の生活は、グローバルサウスに住む人たちが掘り出した資源や、栽培した農作物を輸入することで成り立っている側面があり、過剰な採掘や農作物の栽培は、原産国の資源が枯渇するという問題へと発展する。食料・燃料価格の高騰や地球温暖化など、問題の多くは先進国に責任があるのに、被る影響は自分たちの方が大きい、とグローバルサウスの人たちは思っている。
  しかし近年、経済的にも政治的にも急速に力をつけてきた中国、相対的に低下してきたアメリカやヨーロッパ諸国、ロシアのウクライナ侵攻等でグローバルサウスの状況がかなり変わってきている。グローバルサウスの多くの国々は、それぞれの国益最大化のために欧米・中露のいずれとも「うまく付き合っていきたい」と考えており、「中立」の立場を表明する国が現れてきている。それは、とりもなおさず「経済的実利」なのである。
  東西冷戦後の30年間で、新興国や発展途上国は世界の国内総生産(GDP)の2割から4割に高まり、逆にG7(先進7か国)は7割から4割に下がった。経済的にもグローバルサウスの位置づけが高まっている。特に、インド・ブラジルは、政治的にも経済的にも発言力を増し、次の時代をリードする国になるであろう、と思われる。
  先進国と後進国、資本主義国と社会主義国、東洋と西洋・・・、二極では語れない“新しい今”が来ている。

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