「アンラーニング」

 「VUCA(Volatility:変動性・Uncertainty:不確実性・Complexity:複雑性・Ambiguity:曖昧性)」と言われる変化の激しい時代においては、既存の価値観やこれまでの成功パターン、今持っている知識、に頼っていては事態の大きな変化に対応できない。常に危機意識を持って時代の潮流・動向を見据え、必要とされる知見をいち早く習得していくことが重要である。  
 「アンラーニング(Unlearning:学習棄却)」とは、これまでの価値観や知識を見直しながら取捨選択し、これからの成長のために捨てるべきものは捨て、取り込むべきものを取り入れることである。「アンラーニング」を言葉や知識として理解することは比較的簡単であるが、従来の常識や固定概念を見直し、個人の行動や組織の変革を「体現」することは、容易ではない。
 「アンラーニング」は「ラーニング(Learning:学習)」を否定するものではない。むしろラーニングを前提として、アンラーニングがあり、特に「経験学習モデル」を理解しておくことは重要である。経験学習モデルは、デービッド・コルブにより提案された。「具体的経験」、「内省的反省」、「概念化・抽象化」、「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返すことで、経験学習が行われる。その要素は、「ストレッチ(挑戦)」、「リフレクション(振り返り)」、「エンジョインメント(楽しみ)」である。
 アンラーニングは、単にこれまで学習したものを「忘れ去る」ことではなく、これまでの経験学習から作られた既存の価値観を「認識」し、個人や組織をより進化させるために修正することである。
 人や組織の成長には、法則化されたモデルがあり、成長の段階として、「局面Ⅰ:形成期」・「局面Ⅱ:定常期」・「局面Ⅲ:統合期」の三段階がある。これを「成長曲線」という。局面Ⅰから局面Ⅱへは連続(延長戦上)しているが、局面Ⅱから局面Ⅲへは不連続(延長戦上にはない)である。この局面Ⅱから局面Ⅲへ移行する時に重要なことがアンラーニングであり、パラダイムシフトである。
 未来学者のアルビン・トフラーが言っている。“21世紀におい、「無教養な人」というのは、読み書きができない人のことではなく、「学ぶこと(Learning)」・「学習棄却(Unlearning)・「学び直し(Relearning)」ができない人である”と。

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高原コンサルティングオフィス                                                
高原 要次