山林は蘇るか?

  我が家には7haあまりの山林がある。学生時代は、夏休みの2週間は、この山林の「下草刈り」をすることが父との約束であった。また、春休みは、前年に立木を切り出した後の山地を整備し、杉や檜の苗を植えた。その後40年、私は「下草刈り」も「苗木植え」も「枝打ち」も行っていない。父が亡くなり、今我が家の山林はそのまま手つかずの状態で荒れている。
  我が国の保有山林の規模は、10ha未満が面積で39.0%、戸数で87.8%、50ha未満が面積で70.7%、戸数で98.8%、100ha未満が面積で79.1%、戸数で99.6%、100ha以上が面積で20.9%、戸数で0.4%である。
  日本の木材価格のピークは1980年。平均価格は杉が1m3あたり39,600円、檜が76,400円であった。その後、価格は転がるように下がり、2018年には杉が1m3あたり13,600円、檜が18,400円になった。ピーク時に比べると杉は34%、檜は24%の価格である。更に「山元立木価格(丸太価格から木を伐り倒して運ぶコストを引いた後に残るお金)」でみると、杉は1980年の22,707円から2020年には2,900円に、檜は42,947円から6,358円に転げ落ちた。とてもこの価格ではビジネスとして成り立たたない。1955年に96.1%であった木材消費の自給率は2019年には37.8%になっている。国内産ではなく外材に頼る事態になっている。小規模山林保有者は自家の山林をそのまま放置することになり、時代が移ってその子供世代では自家の山林の場所や存在自体がわからないということも生じている。
  現在の日本全体の林業産出額(木材生産額と栽培キノコ類の生産額が半々)は約5000億円であり、ほぼ同額の補助金が交付されている。この補助金で立木の伐採や運搬が行われているが、補助金を毎年交付して林業を継続しているのであれば、自立した林業には程遠い。
  国土の3800万haのうち、実に2500万haが森林で、うち人工林が1000万haある。言いかえれば、これは我が国の大いなる資産であり、この木材の活用ができれば、林業は再興し、雇用も増え、山林も蘇る。さもなくば、無垢の材として使われるべきA材(丸太)がバイオマスの原料として使われる事態になったり、更に林業従事者の数が減り、棟梁や宮大工の職や技術が継承されず、我が国の木の文化がなくなるやもしれない。
  せめて、我が家の山林は蘇らせたい。さあ、枝打ちを始めよう・・・!椎茸づくりを始めよう・・・!

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 高原 要次