「貞観政要」

 「貞観政要」(じょうがんせいよう)とは、中国唐代の呉競(ごきょう)が編纂したとされる唐の第二代皇帝、太宗・李世民の言行録である。
太宗と、彼を補佐した重臣たちとの問答を中心に編集されてた全10巻40篇からなる書物である。その後の中国皇帝が帝王学を学ぶために愛読し、日本には平安時代に伝来しており、北条政子や徳川家康、明治天皇も学んだと言われている。1300年前の中国の書物が延々と読み継がれ、現在でも多くの経営者が手許に置いて意思決定の際の参考にするという。
 この中に「三鏡」についての記述がある。「三鏡」とは、銅の鏡・歴史の鏡・人の鏡、である。
 「太宗、嘗て侍臣に謂いて曰く、
夫れ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正す可し。
古を以て鏡と為せば、以て興替を知る可し。
人を以て鏡と為せば、以て得失を明らかにす可し。
朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過ちを防ぐ」
・鏡に自分を映し、元気で明るく楽しい顔をしているかチェックする(銅の鏡)
・過去の出来事しか将来を予想する教材がないので、歴史を学ぶ(歴史の鏡)
・部下の厳しい直言や諫言を受け入れる(人の鏡)
 これらの3つの鏡、が君主(リーダー)には不可欠である、と。
 また、この本を座右の書とする出口治明氏(立命館アジア太平洋大学学長)は、組織マネジメント上で5つのヒントがあると述べている。それは、
①  組織はリーダーの器以上のことは何一つできない。
②  リーダーは自分にとって都合の悪いことを言ってくれる部下を傍に置くべきである。
③  臣下(部下)は茶坊主になってはならない。上司におもねってはならない。
④  君は舟なり、人は水なり。水はよく舟を載せ、またよく舟を覆す(「荀子」)。 
舟(君主・リーダー)は水(人民・部下)次第で安定もすれば転覆もする。
⑤  リーダーは常に勉強し続けなければならない。
と。
 この「貞観政要」は、まさに帝王学の要諦である。「時代を越えた普遍のリーダーシップ」が凝縮されている。

 

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