リカレント教育

ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏が著書「LIFE SHIFT」で“人生100年時代”という言葉を提唱した。これまで寿命を80年として描いてきた人生を、抜本的に考え直す必要ありそうである。

更に、変化のスピードが急激に速くなり、テクノロジーも進化し、仕事自体・その中で求められるスキルが大きく変わる。何十年も前に学校で学んだ知識や一個人の経験から得られた知見だけで、その後の人生を歩んでいけるとはとても思えない。そうした観点から、働いている大人がスキルを身につけ直す・学び直す教育機会、すなわち「リカレント教育」が注目される。

1950年には人口の55%が24歳以下だったが、2030年には18%になる。何とその比率は3分の1である。大学が重視するマーケットも1950年は55%の「若者」であろうが、2030年の大学のマーケットは18%の「若者」だけではなく、むしろ82%の25歳以上の「大人」を重視すべきではないだろうか?
一度学校を卒業し、社会に出た人の人口が4分の3以上を占める時代になれば、教育の基本的な対象は大人だという、新たなパラダイムにシフトする必要があるように思う。

実は、今現在大企業では定期的にスキルや知識をアップデートし、変化する環境に適応するために研修や訓練の「学びの機会」を設けており、これが企業経営にとっては重要な要素となっている。しかし、小企業や地方企業ではその機会も少なく、時代から、特にグローバルな視点やイノベーションの観点から大きく後れをとる傾向にある。

この「大人の学び直し」を大学が担ってはどうだろうか。すでに文部科学省の方針として、リカレント教育の方向性が示されて形の上では実施されていることになっている。しかし実際は、日本で25歳以上の通学率は2%、OECD諸国の平均は25%である。MBA(経営学修士)とまではいかずとも、もっと多様で広範囲な新たなビジネススキルを習得する機会が提供されることを望む。大学のリカレント教育として、実学としてのビジネススキルだけではなく、いわゆるリベラルアーツである教養や知性を磨く分野も広く大人にも解放されるとありがたい。

大学の大きなマーケットは25歳以上の「大人」ではないだろうか。

 

ラーニング・システムズ
高原コンサルティングオフィス

高原 要次