小さな「レジリエンス」

秋の収穫が済み、稲刈りが終わった田圃の畔に曼殊沙華の赤い花が咲いている景色を観るのは良いものである。今、穏やかな気持ちで田圃を眺めているが、3週間前はそうではなかった・・・。

台風と、それに続く「線状降水帯」と言われる同じ地域に次々と積乱雲が発生し、長時間連続して大量の雨を降らせた豪雨。それによって、我が家の田圃は全面倒伏。なぜ、ここが線状降水帯に・・・、なぜ収穫3週間前の今・・・、なぜ我が家の田圃だけが・・・、と気落ちした。

1年間コメ作りを休んだので地力が回復していた。間断潅水が上手くいき、稲株も大きかった。レンゲも一面に生えて養分になっていた。つまり豊作だったのである。豊作故に稲穂が重く倒れた・・・。よもや、こんな事態になろうとは・・・。収穫が少なくなる事よりは、丹精込めた私の作品が無残な姿をしていることに肩を落とした。

学生時代、実習生として1年間南米に派遣され一人でアマゾン河を遡った。月に200時間の残業をしたし、事業を起こし厳しい局面を何度も経験した。“俺はタフな人間だ”と思っていた。その私が、たかが田圃が全面倒伏したくらいで落ち込むとは、情けない。俺はこれほど軟な男だったのか・・・。

ところが、倒れた稲も20%くらいは起き上がり、70%くらいは生きている。私も、徐々に頭が上がりこの事態に対処する方法を模索し、行動し、稲刈りを終えて今平穏でいる。稲も私も「レジリエンス」。

「レジリエンス」は一般的には、“逆境に対する反応としての精神的回復力や自然的治癒力”、“ストレスや逆境にさらされても、適応し、自分の目標を達成するために再起する力”と定義される。つまり、回復力・治癒力・適応力と表現されるように、それは「力」であり能力なのである。

その能力は4つ。

①  「Control」(コントロール)

  自らがコントロール可能なものに集中して遂行する能力であり、「できること」と「できないこと」を区別できる能力。

②  「Challenge」(チャレンジ)

  新しいものに挑戦し、自分を変えていこうとする姿勢である。さまざまな身近な変化をチャンスととらえる能力。

③  「Commitment」(コミットメント)

  自らの価値観を信じ、その価値観に従った行動を継続する能力。

④  「Connectedness」(人間関係・周囲の人たちとのつながり)

  自分が頼れる人間関係を作り、それを維持する能力。職場や家族、地元、隣近所の安定した人間関係、「人間関係ネットワーク」。

事故や悲しい出来事で、気落ちしたり落ち込んだりするのは当たり前のこと、それからいかに立ち直るか、その能力を有しているか否かが問われる。そして、この出来事からくるストレスをいかにパワーに変えるか。実は、ストレスは人間をより強くする。

私の小さな「レジリエンス」でした。

 

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高原コンサルティングオフィス

 高原 要次