“鉄人”衣笠

“鉄人”衣笠 先日広島で、衣笠祥雄氏にお会いし、熱燗の盃を交わしながら野球談義に花を咲かせた。元広島東洋カープの、あの「鉄人衣笠」である。全力で振り抜くあのパワフルな打撃から大柄な体格をイメージしていたが、どちらかと言えば小柄な選手、私より少し背が高く(175cm)、少し幅がある(73kg)。
 その小柄な衣笠さんが、2215試合連続出場という世界記録を樹立した。勿論人並みはずれた頑丈な体があったからこそ、「鉄人」と呼ばれる訳だが、この記録達成の最大の要因は何か・・・。
 衣笠さんと接していて感じるのはスマート(smart)さである。周りの人たちへの気遣い、自分自身の鋭さ・強さ・厳しさ、そして粋な会話。
“鉄人”衣笠 プロ野球に身を投じる者は、並外れた体力と運動能力を持ちその上に野球技術を身につけ、プロスポーツ選手としての“明日の可能性”の高い人たちである。“いい体”は前提である。一流、二流は“頭”が決める。
 ではここで言うスマート(smart)さとは何か。それはロジカルな頭脳を言うのではない、要領の良さでもない。自分で目標を設定する能力、自分と他者との違いを明らかにする能力、技術を修得する方法を自分で考えられる能力、物事を継続する能力、そして学び・努力する能力。これが“頭の良さ”であり“頭の強さ”である。
 そこには自分の考え、自分の目標、自分のやり方があるが、“気づき”のトリガーを与えてくれた人と言葉がある。衣笠さんの場合、4シーズン目の監督だった根本睦夫氏から「お前は、自分の人生をどう考えているのだ!一軍に定着してナイターがやりたんだろ!出るために、お前は何をするんだ!」と叱責された。打撃コーチの関根潤三氏が、午前3時に酔って帰った衣笠さんに言った一言「さあ、一緒に素振りをやるぞ・・・!」。この人、この言葉がその後の衣笠さんを決めたそうである。まさに目覚めであり、気づきであり、ブレークスルーのトリガーである。

 「鉄人衣笠」、魅力的な人である。この話の続きは、9月20日(火)弊社ラーニング・フォーラム2011(於:福岡国際会議場、テーマ“次世代の人づくり~学びと志で新しい明日を創る”)で。

ラーニング・システムズ株式会社 代表取締役社長 高原 要次