2018年4月 「エンゲージメント」

 「エンゲージリング」とは婚約時に男性から女性に贈る指輪であるが、文字通り結婚の“約束”であり、双方が一緒に生きていくという関係性の証である。企業と従業員との間の関係性においても、この「エンゲージメント」が重要な要素になってきているように思う。

 経済のグローバル化、IOT・AIはじめとする技術革新、労働人口の減少等企業環境は大きく変わり、日本企業の特質だった終身雇用や年功序列は崩れ、成果主義・能力主義に移行した。その結果、企業と社員との間の主従関係は崩れ、社員のロイヤリティは薄れてきた。逆に、CS(Customer Satisfaction顧客満足)と相対する概念としてのES(Employee Satisfaction従業員満足度)調査を行い、居心地の良い環境を与えようとしているが、優秀な人材の獲得・維持に苦労している。特に上昇志向が強く、キャリアアップやスキル向上を意識している優秀な社員は自身のキャリアプランに合った環境を求めて転職するようになり、多くの企業が将来を担う経営層候補の人材流出に頭を悩ませている。

 「エンゲージメント」とは“個人と組織の成長の方向性が連動している、つまりお互いに貢献しあえる関係”と定義される。砕けた表現をすれば“仕事におけるエンゲージメントとは、会社(組織)とそこで働く個人が幸せな結婚をしている状態かどうか”、ということである。因みにこの指数は、インド77%、米国59%、ドイツ47%、フランス45%、韓国40%、日本は31%だそうである。(IBMケネクサ社調査)

 日本人は、まじめで勤勉、しかし「仕事への熱意」が高いかと問われれば、それは疑問である。この「仕事への熱意」こそが「エンゲージメント」であり、言われたことを指示通りにこなす受け身のまじめさではなく、積極的に仕事に関わり、主体的に向きあう姿勢こそが社員に求められ、その環境を作ることこそが組織の責任である。具体的には、企業理念やビジョン、役割の明確化、ワークライフバランスの推進、タレントマネジメント等・・・。

 そもそも我が国では、その仕事をしたくてその会社を選んだのではなく、その会社に入ったらその仕事をすることになった、というケースが圧倒的に多かった。つまり就職ではなく、就社である。しかし、これからは大きく変わる。ワークシフト、ライフシフト、働き方改革・・・。その要点は「エンゲージメント」かもしれない!

                                                         ラーニング・システムズ株式会社

                                                           代表取締役社長 高原 要次