「草木国土悉皆成仏」

 インドの大乗仏教では、成仏できるのは「有情」あるいは「衆生」と呼ばれる「心を持った生き物」、すなわち人間と動物に限るとされていた。それが中国の三論宗や華厳宗において、「草木成仏」という思想が生まれて、植物も成仏できると考えられるようになった。さらに日本に入ると、「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)」という形で、無機物である「国土」までもが成仏できるのだと説かれるようになった。

 日本では古くから、山や森や岩や川などの自然に霊性を感じる信仰が強くあり、自然そのものを「神」として崇めていた。渡来した仏教は、こうした在来の自然信仰と結びついて、人も動物も、草も木も石も、国そのものも、実は命があり仏性を持ち成仏できる、とした。

 わが国では、古代より「米」は神様とともに作っている。神人共作である。私も現在、山間部で「米つくり」を行っている。5月下旬に田植えをして、9月中旬に稲刈りである。7月下旬に花が咲き稲穂が実ってくる。稲穂が実り始めるこの時期になると、イノシシが田圃に侵入してくる。まだミルク状の籾が好物で、これを食い散らす。また、畔に潜むミミズを漁り、畔を壊す。

 炎天下、鉄柵を設け、網を張り、薬剤を撒いてイノシシ対策を施すのであるが、イノシシは実に巧妙で学習能力が高く、知恵比べである。最終的に落ち着いたのは「電気柵」。田圃の周囲を電気柵で囲み、侵入を防ぐ。これが最も有効である。

 炎天下で電気柵の設置を行いながら、イノシシを害獣として駆除したい、何とかならぬかと思う。
しかし、「草木国土悉皆成仏」、自然界すべてに仏が潜む、人もイノシシも稲も命あるもの、自ずと然りで共生できぬものかと、思案する・・・。

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